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祖父、昭之とその兄の勘治はずいぶん歳の離れた兄弟だった
と言うのも勘治は先妻の子で、先妻と死別してから何年も後に再婚をしたので、親子ほどとは言わないまでも、昭之が物心つく折りには既に成人して、昭之にとっては2番目の父親のような存在だった
勘治は家を出て独り住まいをしていたが、引っ込み思案の昭之とは真逆で母が違うからといって遠慮するような性格ではなく、しょっちゅう実家に顔を出しては飯を食い、昭之の相手をしてやっていたので、兄弟仲は非常に良かった
昭之も何度か研究室に連れてもらい、勘治の研究の一端を教えて貰ったようだが、昭之には何の研究をしているのかさっぱり解らなかった
そして、その解らないと言う事が昭之にとっては、兄が物凄い研究をしている証のようで誇らしく思っていた
だから、勘治が半年ほど研究所を空けた後に、朱星という字もろくに読めない田舎の娘を連れ帰り研究室に入れる事となると聞いた時は朱星に激しい嫉妬を覚えた
聞けば朱星は昭之より2、3上なだけなので、読み書きや計算が出来る分、昭之の方がずっと役に立つ
それを言うと勘治は「それは違うのだ」と笑って受け流し、昭之を更にやきもきさせた
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