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勘治は朱星を伴い実家にやってきた
噂に聞いていた朱星を昭之は初めて見たのだが、その姿を見て驚いた
文字も読めず、海に潜って海女漁をしていると聞いていたので、どんな野暮ったい娘が来るのだろうと思っていたら、濡れたような艶やかな黒髪に抜けるような白い肌の妖しげな魅力のある娘だったのだ
「いいかい。これからは朱星がお前の義姉になるんだよ。というか、それを許して貰いに来たんだがね」
ぽかんと口を開けたままになっていた昭之に気付くと勘治は嬉しそうに笑って教えてくれた
当時、勘治は三十になった頃だから、朱星とは半分も差があったが二人はまるで気にしていないようだった
二人が両親に挨拶をしている間、昭之は部屋に入れては貰えなかったが、庭からこっそり覗くと勘治の隣に座る朱星の姿が見えた
「ふつつか者ですが、よろしくお願い致します」
普段はもっとお転婆なのだろうと思わせる、たどたどしくも丁寧に挨拶をする朱星は昭之が今まで見てきた女性の中で一番美しいと思った
しかし、朱星が家を訪れたのは一度きりで、祝言もあげず二人は研究室に入り浸るようになり、そしてあの事件がおこる
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