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「……ドウ? おい、シャドウ! 聞こえてるか!」
──自分の名を呼ぶその声にシャドウは思わずはっとすると、どこか遠くにあった意識を取り戻した。
それと同時に目の前に飛び込むように映ったのは、死屍累々(ししるいるい)。
薄く立ち込める砂塵の中に、敵と味方の死体がごった返しになってそこらじゅうに散らばっている光景。
……彼らが立っているのは戦場だ。
そしてどうやら今しがた、この近辺の戦闘に決着がついたばかりのようだ。
少し遠くに視線をやれば、撤退していく敵軍が確認できる。
彼らの軍の勝利である。少なくとも、この場は。
撤退していく敵軍に向けた視線をなんとなく足元に落とすと、つま先にくっつきそうな距離に、敵兵の死体が転がっている。
シャドウの持つ剣にはまだ血が滴り落ちるほどにべっとりと付着していた。
どうやらこれは今自分が斬ったばかりの兵士のようである。さしずめ、敵軍の最後の犠牲者であったというところか。
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