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「随分とまぁ、昔のことを思い出してたよ。よくあることなんだけどね」
目も口もぽかんと開け、視線を目の前の死体の一部に固定し、呆けた顔で言うシャドウ。
その頭の中では、今思い出していた内容の余韻を未だに味わっていた。
どうやら彼は、最後の兵士を斬り付けたあたりから、意識が数年前の記憶に向かって飛んでしまっていたようだ。
……彼が初めて人を斬った時の、苦々しい記憶のことである。
その時の感覚は数年経った今でもよく覚えている。
よく覚えているからこそ、脳内で再生される光景はとても鮮烈なものだった。
抵抗することもかなわず襲い掛かってきた強烈な吐き気、動揺によりぐるぐると乱舞する視界。すっかり血の気の引いた全身。
その全てをはっきりと彼は思い出せる。
──しかし、その地獄のような感覚に再び陥る方法だけは、彼にはもうわからなくなっていた。
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