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「おい、何してんだチビ!」
血に濡れた剣を見て、さらに自分が作り出した屍にようやく気が付き、放心状態となった青年の肩を誰かが力強く掴み、発せられた大声。
その恫喝(どうかつ)のごとき迫力の篭った声に青年ははっとすると、首を勢いよく斜め後ろに回した。
その時の青年の顔は酷く不細工だった。
なんせ、そのはずもないのに話しかけてきた相手のことを『敵』かと疑い、目をこの上なく見開き口は半開きという、怯えた様子で振り返ったのだから。
そして数秒の後、彼は酷く安堵したらしく、今度は強張った顔の力が一気に引いていった。
声をかけてきたのは味方の一人で、同じく傭兵仲間として同じ隊に配属された中年の男だった。
いや、傭兵仲間と気軽に呼ぶにはいささか礼を失するかもしれない。なんせ彼は先輩格の存在の男である。
とにかく話しかけてきた男の正体を知った青年は目に見えて脱力し、同時に彼を襲っていた不快感から一瞬解放されたかのような安堵感に包まれ、中年の男にもたれかかってしまった。
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