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「おい!? なんだ、どこかやられたのか!?」
男は自分にもたれかかってきた若者をしっかり支えつつ、焦りの様相を呈していた。
しかし若者の着けている鎧は比較的綺麗であり、斬られたということはなさそうである。
焦りの表情から今度は顔をしかめ、疑念を表情に出す。
ここは戦場。今は味方が戦線を押している状況のようだが、それでもこの場に留まるのは危険だ。
とりあえずぐったりしたこの若者を引きずるように連れて、男は後方へ下がることにした。
その最中、男に引きずられつつ青年は重い首を少々持ち上げ、自分が殺してしまった敵兵をもう一度だけじっくりと凝視した。
見たくて見たわけではない。何が自分をそうさせたのか。彼にはよくわからなかった。
ただ、見なければならないと思った。そんな感じだろうか。
幸か不幸か、ちょうどこちら側に顔が来るように、その兵士は倒れていた。
ヘルムによって頭の大部分は隠されているが、表情だけははっきりと視認できる。
──気のせいだろうか、事切れているはずのその兵士は、青年を睨めつけているようにも見えた。
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