十鬼と総司のとある日の出来事

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~十鬼視点~ 島原の芸子としての仕事を終え、屯所の自室に入るとすぐに、俺は力なく畳の上に倒れた。 十「あ゛~…、疲れた…」 ついつい口から「疲れた」と言う言葉が出てしまう。 角屋で御職になってからというもの、芸子の仕事が多忙になった。 一つの部屋が終わったら次の部屋へ。また終わったら次の部屋へと、休む暇が全くない。 おまけに、屯所に帰る時間が遅くなり、睡眠時間が削れまくっている。 …一日だけでいい。休みが欲しい。 確かに芸子の仕事は楽しい。でもやっぱりこれ以上身が持たねェよ。 土「おい、十鬼。朝餉の時間だ。さっさと広間に来い」 寝ようと思った瞬間トッシーが部屋に来やがった。今日の睡眠時間はゼロか。 うぅぅ~…寝たい。 土「…どうした、元気ねぇな」 トッシーが俺に気遣って頭を撫でてくる。でも、何で男への気遣いが頭を撫でる事なんだよ。 確実に変だろ。 でも、撫でられている間は寝てていいので抵抗はしない。 十「…トッシーよ」 土「なんだ」 十「俺の事、好き?」←(友達的な意味で) 土「…なんだよ。そんなの聞かなくても分かってるだろうが。 …好きに決まってんだろ」←(恋的な意味で) たぶん俺と土方さんの間での好きは確実に食い違っているが、まぁ、いいか。 十「…好きなら俺に休みを頂戴。一か月ぐらい」 土「ふざけんな。今、長州藩の奴らの潜伏先の情報を掴んで忙しんだ。一か月もやれるか」 長州の奴等なんか知るか!俺はとにかく休みが欲しいんだ! たまにはどっかに出かけたい! 十「や・す・み!や・す・み!」 土「だぁぁぁ!うるせぇぇぇ!!朝っぱらから叫ぶな!」 叫んでんのはアンタもだろうが! 俺の二割増しぐらい叫んでんぞ! しばらくトッシーに「や・す・み!」と言い続けていると、トッシーがボソッと言った。 土「おまえが長州の潜伏先を殲滅できたら、休みを考えてやらなくもない」 なぬっ!
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