彼のお仕置き

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~千雪視点~ もうすぐ月が真円を描こうとしている夜。 夏のうだるような暑さが和らぎ、秋を感じさせる心地よい風が私の頬を撫でた。 私は十鬼さんと一緒に縁側に腰掛け、お茶を啜りながら静かな夜を堪能していた。 仕舞風呂から上がり、廊下を歩いていたら偶然会った十鬼さんに、一緒にお茶を飲まないかと誘われたのだ。 まだ少ししか経っていないのに、湯上りで温かかった髪がすっかり冷たくなっている。 十「大分涼しくなってきたな」 十鬼さんが呟く様に言った。 千「そうですね。この前夏が来たと思ってたんですけど、もう秋になるんですね。一年があっという間です」 十「だな…。楽しい日々はあっという間に過ぎていく」 どこか憂いを帯びた声に私はチラッと隣にいる彼を見る。 十鬼さんはお茶を飲みながら月をぼんやりと眺めていた。 私は思わずその姿が儚くて綺麗だと思った。その姿をじっと見ていると十鬼さんと目が合い、すぐに逸らしてしまう。 十「なに?」 千「いっ、いえ。なんでもありません」 十「ふ~ん」 見なくても分かる。十鬼さんは今、イジワルな笑みを浮かべてるんだ。 十「千雪」 名前を呼ばれて再び彼を見ると、十鬼さんは膝上をトントンと指で叩いていた。 その仕草に私は頬が熱くなる。 千「あの…十鬼さん…」 十「ここにおいで」 この頃、十鬼さんはよく私を膝の上に乗せたがる。どうやらこれが最近のお気に入りらしい。 私は彼の膝の上に乗るのが嫌じゃない。むしろ十鬼さんを近くに感じる事が出来るから好きだ。 でも、やっぱり恥ずかしいから‥いつも躊躇してしまう。
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