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見たところ、ふたりの手に余りの傘は無く、現在使用している一本しかない。
すると、未香と千雪は気まずそうに目を逸らした。
未「実は、ここに来る途中、左之さんと永倉さんに会ったんだ。それで、ふたりに傘をあげちゃったの…」
千「途中で帰ろうと思ったんですけど、屯所から少し遠かったのでそのまま来ました…」
十「ああ、そう。なら仕方ないな」
俺はチラリと未香が持つ傘を見た。
普通より大きい傘だ。
これなら、三人同時に入れるかもしれない。
俺は未香から傘を受取り、その下に未香と千雪を引っ張り込んだ。
十「少し歩きにくいけど、傘が一本しかないんだ。恨むなら左之と新八を恨めよ」
なんせ大人が三人一本の傘に入るんだ。自然と体が密着してしまう。
千雪は顔を赤くして俯き、未香は「お兄ちゃんと相合傘だ~♪」とか言って、ノリノリで俺に抱き着いてきた。
十「抱き着かれたら歩けねェよ、アホ」
未「み゛ゃっ!」
未香の頭を軽く叩くと、奇声が聞こえた。
何だその声は、猫か。
十「ほれ、行くぞ」
千雪の肩を抱き寄せると、未香は俺の腕に抱き着いてきた。
左は千雪、右は未香がいる。
…両手に花ってこれを言うんだろうな。
未「どうしたの?」
千「早く帰らないと雨に濡れてしまいますよ?」
十「そうだな、帰ろう」
俺は愛しい恋人と妹と三人で相合傘をしながら屯所へと帰って行った。
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