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「その神具を使いこなせば世界は混沌に堕ちたも同然!
名も無き鳥よ。貴様の目覚しい活躍を期待しているぞ」
嘘だ。ルシファー様が私に期待した事なんて一度もありません。
どうせ今も『チキンラーメン食いてぇな』くらいしか考えてませんよ。
それにしてもこのリブロースチキンとかいう玩具は持ち運びに不便ですね。大きいし重いし、可愛くない。地上に出たら質屋にでも売ろうかな。
「はぁ、では……行ってきます」
「あ、ちょっと待て」
くるりと踵を返した所で、威厳も何も無い声で呼び止められる。そんなフレンドリーな関係じゃないですよ、今更ですが。
「そろそろ貴様にも名前をくれてやろうと思う。この仕事が終わる迄に考えておくぞ」
それは思ってもいない朗報です。
そもそも私は個人の名前を持たない鳥人。親が名前を付けると言った風習も持たぬ種族故、これといった呼称もありません。
中には自ら名前を付けて名乗るものもいますがね。
ですが折角名前を付けてくれる方が居るのだから、自ら名乗るのは止めておこう。
「それが今回の仕事の報酬ですか?
いやぁ、嬉しいですね!ルシファー様の様な残念センスを持つ方から名前を頂けるなんて」
「貴様、鼻毛モリアンとでも名付けてやろうか!」
「すみませんごめんなさい行ってきまああああああああす!!!」
弾かれる様に私は翼をはためかせた。そんな名前で呼ばれるくらいなら死んだ方がマシですわな!
背後からルシファー様の罵声が飛んできますが、無視して地上に繋がる通路に飛び込む。人の住む地上より遥か地下に沈んでいるこの場所から青空の元に出るには、このダクトの様なトンネルの中を上に上に飛び続けるしかありません。
……飛べない人はどうやって地上に出ているんだろう。
「あぁ~出張ですか……変な事とか起こらないと良いんですけどねー……」
しかしこういう展開と言うものは、どうして変な予感ばかり当たるのか……。
この仕事が後に、私自身を数々の大事件に巻き込む事になる等とは思いもしませんでした。
何と言うか、予感は嫌なもの程当たるというのは……、
お約束です。
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