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重い蓋を頭で押し退けた先に見えたのは、緑溢れる森でした。
……随分長い事飛んでいましたが、どうやら無事に地上に出られた様です。
頭が潰れそうなので蓋を退かす。良く見たらこれ、マンホールの蓋じゃないですか。
表面には『地獄管理委員会』の文字と悪魔の羽のマークが彫ってある。
私が通って来た道は下水道か何かだったのでしょうか……。
いえ、注目すべきはそこじゃないです。
何故その地獄直通のマンホールが、こんなチンケな森に繋がってるかってことですよ!
見渡す限り木、木、木。生い茂る葉は太陽の光すら遮っていて、陰鬱な空気すら漂っています。
間違ってもこんな所でピクニックしたくない。五分で帰りますね。
勿論私は帰る訳にもいかないのでさっさとマンホールから抜け出し、蓋を閉め直す。
と言うか……。
「……誰もいませんよね、これ」
あぁ、ルシファー様。やっぱり貴方はバカだったんですね!
悪事を働く仕事なのに、人間どころか普通の動物が住んでいるかすら疑わしい。こんな所で出来る悪事と言ったら、精々森を焼くことくらいです。
そんな私はマッチの一本も持っていません。完全に『詰み』というやつです。
「この状況はひでぇですね……。そもそも此処は何と言う名前の森で、世界地図で言うとどの辺に位置するんでしょう?」
こんな事なら、せめて地図の一つくらい用意しておけば良かった。目的さえ果たせれば場所は何だって良いのですが、世界を巡るとなるとやはり地理は頭に入れておいた方が便利です。
うーん、と早くも訪れたピンチに思わず唸り声が出る。
ーーその時でした。
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