5人が本棚に入れています
本棚に追加
「では今、早速困った状況なんでご指導お願いします。これから森を焼くので派手に燃えるものをください」
「地上に出て早々に何をしようとしている貴様!無闇に命を奪うなと言っただろ鳥頭!」
「えっ?それって『人の命は』ですよね?大丈夫ですよ、この森人居なさそうなんで」
確信はありませんが。実際、本当に人がいないかどうかなんて確認することは難しいですから。もしうっかり人を巻き込んでしまったらその時は……その時考えよう。
ルシファー様は私が信用ないのか、受話器の向こうで『こいつ馬鹿なんじゃないの』とか呟いている。聞こえてますよ!
『……とにかく、森を焼くとかそういう事はするな。それと、こちらから物を送る事は出来ん。聞きたいことがあれば聞く』
「では、此処はどこですか?ルシファー様って何が出来るんですか?彼女とか居るんですか?って言うかモテるんですか?ささくれを綺麗に剥く方法は?オムレツを半熟トロトロに仕上げるコツは?ゆで卵の綺麗な剥き方は?タンスの角に小指をぶつけた時の痛みの紛らわし方は?世界の始まりは何ですか?」
『そんなの今絶対使わない知識だろう!さり気なく俺を馬鹿にしやがって!』
しかしその質問の答えが返って来ることはありませんでした。
ーーザワザワ…
不意に感じた、森の中で蠢く何者かの気配。それも一つや二つではなく、無数。何時から?
それはわかりませんが、自分達以外の別の『何か』が居ることを知った私達は、森の沈黙に同化する様に一瞬で口を噤んだ。
『……何か居るな』
「って言うかルシファー様、電話越しに判るんですか?実はどっかから監視してます?お願いだからスカートの中を覗く様なことだけはしないで下さいね」
すると、受話器の向こうから鼻で笑う音が聞こえてきました。
.
最初のコメントを投稿しよう!