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『そんな赤キノコ柄の下着になんぞ興味無い』
「……それ私の今日のパンツ」
『ーー来るぞ!構えろ!』
声と当時に、頭上から掌大程の大きさの甲虫が降ってきた。その数およそ数十匹。
大方木の茂りに隠れていたんでしょう。日光を遮るくらいですから、隠れ蓑には最適かもしれません。
見た目に似合わぬ俊敏な動きで、あっという間に辺りは緑色の鈍い光沢に囲まれた。蟻の様な口を横にパクパクさせている所を見ると、多分肉食です。食べられます。
『只の虫じゃないぞ。油断するな!』
「で、何故ルシファー様は私の今日のパンツの柄をご存知なんですか?私が可愛いからって盗撮は良くないですね!」
『そんな話はどうでもいい!周りを見ろ馬鹿たれ!』
「知ってますよ!要は戦えってことですよね。仕方ないです無傷で売っ払おうと思ってたけど、この際このリブロースチキンで……」
『おい、売るな』
背中に手を伸ばしたところで気付いた。
ルシファー様から貰ったあの玩具ーー鎌が、無い。
念の為に辺りを目で探って見るも、影も形も見当たりません。残念ながらあの玩具以外に武器の持ち合わせはありませんので、アレが無いってことはつまり『詰み』です。
「あっ。そういえば、地上に出る時に邪魔だったんですよリブロースチキン」
『リベラティオンだもん!貴様まさか……』
「落っことして来ました」
『こんの役立たずがああああああああ!!!』
鼓膜をぶち抜く絶叫に警戒したのか、周りを囲む甲虫がキィキィと鳴き声らしき音を立てて騒めき始める。いよいよ持ってマズい状況です。
って言うか、私は悪くないですよ!刺激したのはルシファー様です。五月蝿い大人は駄目ですね!
とはいえこの状況、打破するのは難しそうです。奴らは空も飛ぶ様だし、こちらも飛ぶとなるとこの数押し切るのはきっと無理です。羽を齧られたら堪りませんし。
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