5人が本棚に入れています
本棚に追加
で、この分だとルシファー様の援護支援も期待出来ません。私達に残された選択肢は、かなり少ない様です。
「あっ、もしかしたら意外と知能のある虫かもしれませんよ?ほら、こうやって無害だということをアッピルすれば意思の疎通もーー」
ーーガブッ
「無理でした」
期待も虚しく、無防備に差し出した指先に横開きの口が噛み付いて来ました。
あれ、結構痛い?と言うか段々痛みが増してきている様な……。それに噛まれた所からどんどん指が変色して感覚も曖昧に……。
「ってこれ、毒虫じゃないですかー!やだー!」
『鳥頭が!今すぐ逃げろ!』
ルシファー様の言う通り、私は転がる様に駆け出した。噛み付いた虫を勢いで振り落とすと、それに触発された他の虫達が一斉に飛び掛って来る。
こんな所で虫のランチになるなんて冗談じゃないですよ!
噛み付かれるのを必死に避けながらひたすら森の中を突き進むも、それを追う虫達の数は一向に減る気配を見せません。
「ひぃぃ~~!ルシファー様、見てるんなら助けて下さいよぉ!天使の様に可愛い部下が目の前で天に召される様を、黙って見てるんですか!?」
『むぐっ……こんな時にまで……自己主張……出来るんだから……何とかなるだろ……ごくん』
「何食ってるんですかこの非常事態に!人でなし!」
『ええい五月蝿い、今食べないと伸びちゃうだろ!あと俺は人じゃない』
「でべそっ!!」
咄嗟に出た身も蓋もない悪口を最後に、私は叩き付ける様に電話を切った。どうでもいいですが、ルシファー様が本当にでべそかどうかは知りません。
受話器を手放したことで漸く両手が空いたので、私は全力で虫との距離を離す。
自慢ですが、私、結構足は速いんですよ。運動会で言うと、リレーで3位くらいです。これなら振り切るのも余裕ですね!
……そう思っていました。
.
最初のコメントを投稿しよう!