5人が本棚に入れています
本棚に追加
実はつまようじに見せかけた食材だったら嬉しいのですが、その可能性はなさそうです。
『そんなに喜んでくれるなんて、母さん嬉しいわ』
『私は悲しいです』
マズイです。ここで断ったら私がつまようじにされそうです。あぁ、本当のお母さんがこんなんだったらどうしよう……。
『仕方ないわねぇ。久し振りに母さんに甘えたくなったのですね? ……はい、あーん』
聖母の様な笑みを浮かべながら、妄想の母はつまようじを一つ摘んで差し出して来た。一瞬でも口を開けたら突っ込まれそうです。こ、殺される……!
必死に首を横に振りながら拒んでみますがそこを無理矢理、力任せに顎を掴まれた時私は死を覚悟しました。
あれ? そう言えば少し前にもそんなことがあった様な……。
『ふぁっ!? ひょ、ひょうれひた! わらし、ルシファーひゃまのおひごとはががががが!!』
顎を掴む手に込められた力が一気に増した。この人、絶対骨を砕くつもりだ!しかし妄想の母の笑顔は崩れない。
せ、折角目的を思い出したというのに、つまようじを食すか食さないかの瀬戸際に立たされながら顎を粉砕されて死ぬんでしょうか……! 何か骨がミシミシ言ってきました。いよいよ死ぬ……!
『そうそう。甘れられる内に甘えておくのよ。例え役に立たないと思うものでも、あなたの為に贈られたものなら、大切にしていればいつかは本当に役に立つ時が来ますよ』
つまようじなんか大切にしても、役に立つのはスルメ食った後くらいだと思います。なんて返せる筈もなく、フグみたいな顔でみっともなく震えるしかありません。
私のキュートフェイスがフグ顔のまま固まってしまったらどうしてくれましょう! あ、そろそろ顎外れそう……。
そうこうしている内に意識が朦朧として来ました……こんな死に方ってないです。
妄想の母の笑顔を最後に、私の視界は完全にブラックアウトしたのでした。
* * *
.
最初のコメントを投稿しよう!