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しかし『クチャラー青年』と言われたのを気にして居られるのか、ルシファー様は麺を啜るのを止めました。案外ナイーブです。
「……このままでは我ら悪の組織の自然消滅も時間の問題。嘗ての栄光は最早、幻に過ぎん」
「ヴァニッシュメント自体に実績は何も無いですけどね」
「うっさい」
豪華な椅子に座ったまま、先程迄とは打って変わって真剣な眼差しを向ける。突っ込みも鋭く斬れるようです。
「何時の時代も、闇の幕開けは些細な切っ掛けだ。種を蒔き、芽吹かせれば、人は不思議と簡単に堕落する。
堕ちるのは一瞬だ……。世界は常に闇に怯えている……その一瞬に。
名も無き鳥よ!貴様に使命を与える!」
赤く染まった爪の映える、細い指が私を差す。ルシファー様の眼孔の中で紅と漆黒が混ざる様子が、私の位置からも判ります。
裂くような声が辺り一面に響き渡り、瞬きをした瞬間に景色を闇へと塗り替えました。
「……ルシファー様」
「回りくどい演出で尺を稼がないで下さい。私も説明が面倒なので、出来れば二行くらいでお願いします」
「ああああああ貴様ッ!よくも俺の貴重な格好いいシーンを台無しにしたな!!」
「あっ、クチャラー青年はモテません、ってもしかして気にしておられましたか…?だから今ここでアピールしておこうと、そういう所望ですね!?」
「五月蝿い五月蝿いそんなんじゃないやい!」
「解りました。では、シリアスの続きをどうぞ!」
「もうやらん!!手っ取り早く率直に言うぞ!!」
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