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超えてはいけないボーダーライン。……ギリギリ踏みとどまれたかな?
今日、一番驚いた顔を見せる三木杉クン。
呆気にとられて声が出ないようだった。
嫌な沈黙が二人の間を流れる。……困った、間が持たない。
「ええっと。ホントは明日渡すつもりだったんだけど、無事にミッションが完了したので、残りのチョコは自分で処理しまーす」
ええい! 家に帰ってチョコのヤケ食いだ!
一度は渡せないと思ったぐらいだ。
食べてもらえたんだから、この結果で十分満足だ。
「郁に……あげないの?」
ええ?……まだ言うの? それはもういいじゃん。
「そう言うの、メンドクサイからパス! カオルちゃんは市村さんにもらえるから大丈夫だよ」
心で泣いて笑顔で答えた。
外は日が暮れ始めている。 ……お見舞い、間に合うかな。
「私、片付けしなきゃ……」
何か言いたそうな三木杉クンに背を向け、残りの調理器具を棚に戻していく。
「終ったぜぇーい!!」
バタンと扉が開いて、谷っちが準備室から勢いよく出てきた。
何をするにもオーバーアクションな人で困る。
「藤吉、終ったか? ……ん? なんで三木杉がいるんだ? は! 忘れてた!」
どうやら今、進路指導の事を思い出したらしい。
「谷っち、俺、教室ですごく待ってたんだけど……」
「いやぁーめんご、めんご。 藤吉にどうしてもって頼まれてさぁ」
……私は頼んでません。 頼んだのは南ちゃんです。
「なあ? 藤吉」
笑顔で谷っちがこっちを向く。
……南ちゃんのお願いに、おもいきり鼻の下伸ばしてたくせに。
少し、谷っちに意地悪をしたくなった。
「……だったら、お礼は私のチョコでいいですか?」
「え? 藤吉の作ったチョコ、くれるのか? 平瀬が怒んないか?」
……どいつもこいつも。
私とカオルちゃんを、どうしてもセットに扱いたいらしい。
「カオルちゃんは、ただの幼なじみです!!」
怒りに火がついた。
仕舞ってあったチョコレートを取り出してくる。
「私、南先生の作った見本のチョコを預かってるんですけど……」
「え? 南先生の? マジで?」
さすが谷っち。すぐに食いついてきた。
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