おねだりチョコレート

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「ここでさ、待っててくれると嬉しいんだけど……」 「え?」 「谷っち、3分で済ますって言ってるから、俺、すぐ戻ってくる」 ああ、そうしてもらえるとありがたい。 急いで包んだら、とんでもないラッピングになりそうだったからだ。 「それから……送ってくよ。 外、暗いし」 その言葉に思わず窓の外を見た。 確かに日が沈んで、暗くなっている。 「じゃあ、待っててね。すぐ戻るから」 そう言って、三木杉クンが笑顔で部屋から出て行った。 見届けてすぐ、その場にへたり込んでしまう。 ……どうしよう。 帰りも一緒なんて、心臓が持たないよ。 自分のノミの心臓に手を当てて心配しながら、今度こそ幸せを噛み締めていた。 ……私のチョコ食べたいって、三木杉クンが言ってくれた!! 踊りだしそうな自分をなだめるのに苦労する。 気持ちを落ち着けて、ポケットからケイタイを取り出した。 ……とりあえず、菜摘ちゃんに知らせなきゃ。 メールの作成画面を出してハタと動きが止まる。 この状況を上手く伝えられる自信がない。 しばらく悩んだ末、 『お見舞いに行けなくなっちゃった。ごめんなさい。』 とだけ入力して、送信する。 詳細は顔を見て話す事にした。 ……今はとにかく、チョコのラッピングだ! テーブルの上でショコラ・オランジェとトフィーが、箱詰めはまだですか? と、待ちわびている気がした。 (おしまい)
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