おねだりチョコレート

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ナッツを絡めたトフィー。 オレンジピールを使ったショコラ・オランジェ。 どれもなかなかの出来栄えだ。 早速写メを撮って、菜摘ちゃんにメールで送る。 『どうかな? 美味しそうに見える?』 『すごいじゃん! 味見してあげるから持ってきて』 入院している友人はよっぽどヒマなのか、返信がすぐにきた。 にしても、盲腸の手術をしたばかりなのに、食べてもいいんだろうか? 体調も含めて心配する。 ……ま、いいか。 食べられなくても日持ちするお菓子なので、持って行くことにする。 『OK』と返信し、調理器具の片付けを始めた。 再びメールを受信したので慌てて開く。 『三木杉にチョコ食べてもらえるといいね』 最後のハートマークに思わず赤くなった。 バレンタインは、いよいよ明日に迫った。 学校の調理室で一人、こうやってチョコ作りに励んでいたのも、同じクラスの三木杉クンにプレゼントするためだった。 始めは製菓同好会の2月の活動として作っていたチョコレート菓子。 いつの間にか、必ず男子にチョコを渡す!……と言う、大変なイベントになってしまっていた。 もちろん、二人きりのメンバーである菜摘ちゃんも男子にチョコをあげるはずだったのに、今週彼女は緊急入院してしまった。 結局、なぜか私だけがイベントに踊らされるハメに……。 なんだか騙された感じが否めないが、病気なら仕方がない。 それに、好きだと告白するわけじゃない。 「部活で作ったから……どうぞ」 なんて、軽い感じで渡す事にしている。 これまでも何度か、部活で作ったクッキーやマフィンを食べてもらっていたから、あくまでその延長を装うのだ。 ……でも、やっぱり緊張する。 だって、クラスで一番気になる男の子だから。 しかも、今回は間接ワザを使わないつもりでいた。 間接ワザって言うのは……三木杉クンの友達、平瀬郁(ヒラセカオル)を仲介する方法だ。 ちなみに、カオルちゃんは女子に絶大なる人気があった。 そんなイケメンで派手なカオルちゃんと、控えめな秀才系メガネ男子の三木杉クンは、なぜか不思議と仲が良く、お互いを親友と呼び合っていた。 私はそこを上手く利用した。 そのカオルちゃんにお菓子を託し、三木杉クンと分けあってもらうよう頼み込んだのだ。
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