おねだりチョコレート

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「……そうか。谷っちって、マジでいい加減だよな」 同じ意見を持ってくれる事に嬉しくなった。 その台詞に大きく頷く。 「だいたい、南ちゃんに頼まれたからって、俺との約束忘れるかな。 相手が美人だからってヒドいよね」 すっぽかされたのだから、怒るのは当然である。 「ごめんなさい……」 なぜか谷っちに代わって謝ってしまった。 「え! 藤吉さんが悪い訳じゃないから……あ、謝んないで。 こっちこそ、なんかごめん。これって八つ当たりだよね。……ホントごめん」 逆に深々と謝られて、困ってしまった。 八つ当たり程度で気が晴れるなら、いくらでも受け止めてあげたいぐらいなのに。 そんな事を考えてしまう自分が、急に恥ずかしくなる。 赤くなって思わず俯いた。 ……た、谷っち、早く出てきてぇ!! 三木杉クンと二人きりの空間に、すでに限界を感じていた。 心臓が張り裂けそうである。このままでは失神してしまいかねない。 気が遠くなっていく中、とんでもない音が二人の間に響いた。 互いに目が合い、真っ赤になる。 「ごめん……俺」 慌てたように三木杉クンがお腹を押さえた。 てっきり自分のお腹が鳴ったのかと思ったので、少しだけ安堵する。 「……こんなに待たされるんだったら、パンでも買っておけばよかったな」 小さな声で独り言をもらす三木杉クン。 ……これは、千載一遇のチャンスではないだろうか? こんな好機、二度とないはず! 胸に手を当て、張り裂けそうな心臓にお願いする。 ……5秒でいいから、ドキドキを止めて!! 調理バッドに並んだチョコレートを持ち上げた。 三木杉クンに向けて差し出す。 ……ガンバレ!! 私!! 「ぶ! 部活で作ったから! どうぞ!!」 練習どおりに言えた。 弱冠、声が裏返ったのは許して欲しい。 これが私の限界だ。 ……なのに 「ええ! ……な、なんか、催促したみたいで悪いよ」 そう言って、後ずさりする三木杉クン。 このまま、部屋から出て行ってしまいそうである。 ……ああ、神様!! 何とかしてください!! その願いが通じたのか……奇跡! 再び三木杉クンのお腹が大きな音を立てた。 「わああああ……ごめん。 なんか、俺、最低だ」 さらに真っ赤になって恥ずかしがっている三木杉クン。 こんな顔もするんだと、何だか胸がキュンとなる。
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