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6-11-128
「私、ウィンシア・アルス。本日ただ今の刻をもってセリューナ・ベルセオラの護衛役として長フェシルミア・アルス、あなたに従事いたします」
顔をあげる。
アルスが剣を真横に抜いた。
「動くなよ」
右へ構え、頬の寸前で刃先をとめる。
目をそらさないウィンシアを認めて剣をおさめ、鞘に戻す。
柄を左にして差し出した。
「頂戴いたします」
両手ですくうように受け取った。
ウィンシアが腰に佩く直前、アルスが断った。
「返せ」
「えー、くれるもんだろ、普通」
「そんな急に刀鍛冶が間に合うか」
「えっ、特注?」
「当然だ。お前の持ち味を最大限に生かせる剣をと頼んであるから、暇を見つけて行ってこい。場所は覚えてるだろ」
「うん。いや、聞くと今すぐ行きたくなった」
「その前に初仕事だ。そこの壊れた女、家に送り届けてくれ」
「了解しました」
アルスと違い、ウィンシアは両手で水平に剣を返す。
「おい、帰るぞ、私の大事なお姫さま」
「いやー、ちょっとまってー、二人とも格好よすぎるー…」
両頬を押さえてうずくまっている。
「えらい壊れてるな。手ェつけたのか」
「いや、まだ何も」
「それはまた意外な実態だな」
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