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6-14-131
セリューナから視線をはずすと、編みかけの小さな籠がみえた。
きれいに整った形をしている。
彼女にとっては、幸せにしてくれるフェシルのために、できる努力をしているだけかもしれない。
そしてそれがまた、フェシルを支える力になるなら。
「見当違いもいいとこだぞ、フェン」
セリューナの幸せなんて、フェシルに任せておけばいい。
それが彼女にとっては一番の幸せだろう。
逆もそうだ。フェシルには、セリューナが。
そんなことにも気づかなかった自分もまだまだガキかもしれない。
「ごめんな、セリューナ」
小さく言って、部屋を出る。
遅くなってしまったから余計に、フェシルはセリューナを心配して起きてるはずだ。
居城へ帰ろう。
あの優しい雇い主に、あんたの婚約者はちゃんと眠ったよ、と伝えるために。
―おわり―
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