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プロローグ
アルスの執務室を出て、階段を駆け降りたウィンシアだったが、目的の人物がその途中で立ち止まっているのを見つけ、速度をゆるめた。
「たぶん俺が何を言いたくてあんたを待ってたか、知ってるだろうけどよ」
何も聞かないふりで通り過ぎようとしたが、読まれていると気づき、足をとめる。
「俺は兄上を救いたい。何をおいてもだ」
「お前の兄上は長だ。人の命が関わる戦のさなかに、そういう行動されちゃ迷惑だ。その甘えた考えは改めろ」
「ああ、そうかよ、全部兄上が正しいんだろうよ。けどさあ、いざって時に誰も長の命令に逆らえないんなら、長の命は誰が守るんだ。一族守る長のことを守るってのもさあ、防衛って意味じゃ間違ってねーと思うんですけど」
「それは間違っている」
「なにぃ」
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