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「ホワット?」
おみくじは日本語で書いてある。当然彼女たちは読めない。僕に読めと言ってきた。
まずは積極的な金髪の子。おみくじには「吉」とあった。
目を輝かせ、答えを待つ無邪気さは万国共通らしい。
しかし、困った。吉と言うのは英語でなんと言えばいいのか。悩んだあげく出てきたのはこれだった。
「ノーマル」
たぶん、これで平々凡々と言うのがわかってもらえたと思う。
次にお気に入りのブラウンの子。おみくじを見ると「大吉」とあった。
「ベリーハッピー」
やや興奮気味に言った。それが彼女にも伝わったようで、さっきとは対照的にはしゃいで見せてくれた。それを見て、胸をくすぐられるような気がした。
そして、二人は僕のおみくじの結果を聞いてきた。でも、正直言いたくはない。そう、結果は凶。英語で言うなら、ベリーバッドだ。
それなのに、二人はしつこく聞いてくる。しかたない。小さな声で言った。
「ベリーバッド・・・」
もう一度言えと言ってくる。
「ベリーバッド!」
「ワオー」
そう叫んだ後、二人は抱きついてきた。彼女たちなりに励まそうとしてくれているのだろうか。
胸が当たる。うん、これは励まそうとしている。間違いない。確信した。
と言っても、いつまでもこうしている訳にはいかない。僕は有給を取ってまでここにいるのだ。それに二人だって観光したい場所が他にもあるはずだ。例えば、すぐそばに見えるスカイツリー。
「そろそろ行くね」
僕は告げた。
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