3人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
『大切なものを失ってから、
その本当の価値がわかるなんて、
愚かな人間だね』
と、
思ってくれればいい。
日記帳は涙でところどころインクが滲んでいる。
今ではそれがきみのものなのか、
僕のものなのか、
判別が難しくなってしまった。
毎年、
桜の季節になると、
より鮮明にきみを思い出す。
それは、
きみとの思い出が桜と切っては語れないからだ。
出会いも別れも桜の季節だった。
でも、
最近はだんだんと靄がかかり、
クリアには見えなくなった。
どんなに桜が咲き誇っていたとしても、
モノクロームな風景にしか見えなくなった。
綺麗なはずの桜は、
ぼやけて見えていた。
*
最初のコメントを投稿しよう!