明日香

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『大切なものを失ってから、 その本当の価値がわかるなんて、 愚かな人間だね』 と、 思ってくれればいい。 日記帳は涙でところどころインクが滲んでいる。 今ではそれがきみのものなのか、 僕のものなのか、 判別が難しくなってしまった。 毎年、 桜の季節になると、 より鮮明にきみを思い出す。 それは、 きみとの思い出が桜と切っては語れないからだ。 出会いも別れも桜の季節だった。 でも、 最近はだんだんと靄がかかり、 クリアには見えなくなった。 どんなに桜が咲き誇っていたとしても、 モノクロームな風景にしか見えなくなった。 綺麗なはずの桜は、 ぼやけて見えていた。        *
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