明日香

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就職活動は割と順風だった。 そう言うと確かに聞こえはいい。 でも、 僕は就職戦争という競争から真っ先に逃げだしたに過ぎなかった。 大学の友人たちが皆、 一流企業への就職を目指して悪戦苦闘している中で、 僕は職種や待遇に一切こだわることはなかった。 それでも、 ひとつだけ譲れない条件はあった。 それは、 新潟以外の勤務地であること。 きみとの思い出が未だに漂う土地では、 情緒不安定になってしまって、 とても仕事どころではないような気がしたからだ。 もちろん、 そんな心の中身を面接官に暴露するわけにもいかない。 だから、 僕は心に仮面を纏った。
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