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生ぬるい風が頬を撫でる度、季節が夏である事を思い出す。
別に記憶が吹っ飛んで今が何月何日か分からなくなってしまったのではなく、他に季節を感じる要素が無いからだ。
公園を見れば、遊具で遊ぶ児童も、ましてや玉蹴りに興じる輩もいやしない。
一度、祭りに赴けば、年毎に減っていく屋台の数に驚愕するだろう。
俺たちが昔遊んでいたあんなこと、こんなことを、今の子供たちは経験していない様に思えるのだ。
閑散としてゆく夏のある日を歩いていると、ふとそう思った。
最近のこの国は、どこかおかしいように思う。
手近な児童に道を尋ねれば、次の日には不審人物として町内に知れ渡れるだろう。
通りすがったその道で、もしも児童の後ろを歩いたならば、それだけで学び舎の話題になるだろう。
我が子に何かあったら...と思えばこそなのだろうが、こんな世の中ではむしろ子供に悪影響なのではないだろうか?
とは言ったが、確かに、最近のこの国の性犯罪は増えているようにも思える。親が過保護になるには充分過ぎるほど、子供が暮らしにくい社会なのだ。
いわゆる、『ロリコン』と呼ばれる人間。
彼らは、例えば市民プール、あるいは夏祭りで 、あるいはそこいらの公園などでも、幼い女性を見れば性的に興奮し、その姿に酔いしれ、挙句犯罪に乗り出す。
年々この性癖を持った人間が増え始め、児童への性犯罪も比例して増え始めたころ、痺れを切らした日本政府は新しい組織を設立した。
《全日本ロリコン対策本部》
主に成人女性を中心に設立され、ロリコンの殲滅と児童保護を目的とされた武術集団。
設立当時でこそ、合法的かつ人道的にロリコンを狩っていた彼女たち。
彼女たちの活躍により、世界は平穏な日々を取り戻しつつあった。
そう、ロリコンたちを除いて──
PTAの強い希望と、総理大臣の性癖発覚も相まってロリコンの人権はほぼ無いに等しくなってしまった。
そこから始まるロリコン虐殺。
抑えの効かなくなった組織は、適当な理由を付けてはロリコンを殺すようになった。
さすがのPTAも組織の正当性の無さに気が付いてはいたものの、ロリコン虐殺は留まる事を知らず、むしろ年々死体の数は増えていった。
幼女はロリコンを恐れ、ロリコンは組織を恐れ、組織は殺す事しか考えていない。
町も閑散とする訳だ.......
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