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「それにしても、酷いもんだ」
流れ作業の様に皿を洗いながら、男はそう呟いた。
彼のいる刑務所には既に300万人ほどのロリコンが収容されており、全員が報酬無しで重労働を強いられている。
男以外のロリコンたちは既にその重労働とやらを課せられていたが、彼はまだ入って日が浅く、取り敢えず皿洗いを...ということになっていた。
「あまとう先輩は新入りですもんね...」
男を“あまとう”と呼んだ男は、「この光景にもすぐ慣れますよ」と続け、乾いた笑みを浮かべた。
あまとうと呼ばれた男はその男から視線を外して周りの様子を見渡した。
もちろん、手は動かしたまま。
働いているロリコンたちは、服も顔色も背景と混ざって灰色になっている。
その灰色に、違う色が一色───
場違いなその色に、あまとうは目が離せなかった。
「おーら、キビキビ働けロリコンども!!」
鮮やかな赤が目に眩しい、ムチを持った女が、ロリコンたちを威圧している。
あまとうは、今日この女を初めて見たが、その声が朝自分を起こした声だと一瞬で理解した。
「唯一見れる女が、あれかよ...。あれじゃオカズにもならねぇや」
「......こんな状況でも、先輩は変わりませんね」
2人は再び作業に戻る。
彼はあまとうの洗った皿を並べる役割だ。
黙々と作業をするなか、ただ一人の声が響いていた。
それが気になって、あまとうはまた顔を上げる。
運んでいた物が何かはわからないが、どうやらロリコンの1人が荷物を落として割ってしまったようだった。
女は、その男を、なにか無駄に大きい声で罵倒すると、手に持っていたムチを流れるように振りかざした。
なるほど、失敗するとあいつのムチで打たれるのか...と、あまとうは直感した。
お仕置き程度に考えていたのだろう。あまとうは、あれでもう5歳ほど若い女であればご褒美だと思っていた。
男は涙を流しながら、うっすら笑みを浮かべている。
あまとうには聴こえなかったが、どうやら弁明の意を述べているようだ。
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