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「ムチの1発くらい、ミスったんだから潔く受けりゃいいのに...」
そう呟いて、あまとうは視線を皿に戻す。
次の瞬間、鋭い音が鳴り響いた。
女の怒鳴り声も、男の懺悔も、男の運んでいた荷物が壊れる音も、あまとうには曖昧にしか聞き取れていなかった...。
しかし、この音は......この音だけははっきりと、あまとうの脳に響き渡った。
反射で音源に視線を運ぶ。
あまとうは、しばらく我が目を疑った。
その目に飛び込んできたのは、女の服の鮮やかな赤がヒラヒラ舞う美しさと、男の裂けた身体から水風船の様に飛び散る鉄のような赤だった。
あまとう以外のロリコンたちも、その光景を眺めていた。
男は、腕、首、胴がバラバラになって、涙を流しながら沈んでいった...。
「......おい、二千三百番?」
あまとうは、隣で一緒に作業していた男に声をかけた。
二千三百番とは囚人番号とかではなく、ロリコンたちの中で付けられている“順位”のようなものだ。
一般的に、ロリコンたちはこの順位で互いを呼び合っている。
ちなみに、あまとうは四番だ。
「......さすがの先輩も驚きましたか?」
二千三百番の冷静さにも、あまとうは驚いていた。
ロリコンたちが人間として扱われていないのも知っていたし、組織の女たちがロリコンを適当な理由で殺しているのも知っているつもりだった...。
だが、実際はもっと酷かったのだ。
人の命とはこんなにも呆気なく散っていくものか?
それが当然だと言わんばかり平常心を崩さない周りのロリコンたち。
元からゴミが散らかっていたのだと、ほうきとちりとりで死体を片付ける女。
ロリコンであることがそんなに悪い事なのだろうか?
あまとうは、考えるのを辞めた。
今は皿洗いに集中するべきだと判断したのだ......。
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