紫炎の騎士 3部

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1章 監獄 アルエラが去り、五日が過ぎる。 ティラ達は、アルエラを追いかけて、ノームにある監獄の前に居た。 くすんだ壁に囲まれた建物は、不気味な雰囲気を放つ。 サルスと派出所から面会許可を貰ったティラは、監守の導きで監獄へと足を踏み入れる。 アルエラは既に話を聞きに来たあとであったが、行き場も分からないのでは先に進むことはできない。 監守の指示に従い、ティラは、監獄の門を潜る。ラヴィアとシルエットは、門前に残る。監獄の規定で、面会はひとりと決まっているのだ。 監獄の中は石造りだ。面会室に通じる廊下には、ひんやりとした空気が横たわる。 手足に絡み付いた空気に冷たさを感じ、ティラは、身体を震わせた。 外部と内部に気温差が、あるようだ。 監守のに言わせると、監獄はどこも同じようなもので暖かい場所はないという。 監守が、案内した小部屋は仕切りで区切られていて面会者の顔は互いに見えないようになっていた。 面会といえる場所ではない。 ティラは慎重に周囲を確認してから椅子に座る。椅子は、木製で、座り心地が悪い。 「互いに顔は見えないのね」 監守に質問する。 「一般人が服役中の人間と話すことは、原則、危険行為になります。服役中の囚人の中には面会者を洗脳してしまう輩もいるくらいですから。この仕切りは、以前、事例が起きたので身内以外の人間が来た場合に使います」 「先に来たアルエラ神主もこの部屋で、相手と会話をしたの?」 「はい。監視は耳が遠いのでここでの話が外に漏れることはありません」 「脱獄や犯罪の打合せかもしれないわよ?」 維持悪く問うティラに、監守は笑う。 「我が監獄の脱走比率は、零です。勿論、面会者の犯罪もありません。ご心配なく」 「分かった。ありがとう」 ティラは、自分の前に手が入るか入らないかくらいの穴を見た。その先に囚人服を着た男が既に座っている。相手は、仕切りの向こう側で欠伸をしていた。相手が見えない分、要らない音が耳に入ってくる ティラが座る位置から感じられるのは、男の息遣いと衣服の擂れる音。それから手枷足枷の軋み具合だけであった。
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