1章 出発

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「それは、そんなことさせない!」 食って掛かるクレアをシルエットは眺める。 「あ? なんでだよ」 「それは、言えない」 クレアは、首を振り、口を閉ざした。 そこに、気配は現れる。 シルエットが、立ち上がると同時に、寝ていたラヴィアも起き上がる。 クレアが、シルエットの背後を凝視する。 「それ、返してくれませんか。こっちも必要なので」 声の主は、人間ではなかった。 焚き火の炎が、敵の姿を映す。 「ユズキ――」 クレアが、狐耳の男をそう呼んだ。 「嫌だね」 シルエットが、クレアの前に立ちはだかるとユズキの顔が狐に変わる。 「お前、イヅチを殺した奴だな!」 ラヴィア達の前で身体を変形させたユズキは、叫び、シルエットを狙った。 シルエットは、クレアを掴み、ラヴィアへと投げて、その攻撃を交わす。 「あ――あんときの番人か。単品なら丁度良い。決着付けようぜ!」 シルエットが、剣を抜く。 「シル! 無茶はするな!」 ラヴィアが、言うが最早、戦闘は避けられない。 「うるせえ、外野は黙ってろ!」 シルエットが、怒号を飛ばし、ユズキの振りかぶる爪を避けていく。 ユズキの爪は、空を切るだけでなく、シルエットの衣服を確実に捉えていた。 シルエットの胸元は、先程の一撃にやられ薄く血が滲んでいる。 動きとしては、ユズキと互角だが、ユズキの方が僅かに間合いを狭めていた。 「ちょこまかと!」 ユズキが左右に小刻みにステップを踏み、シルエットの剣の軌道を確実に乱す。 ユズキの速さに着いていくには、体力勝負となりそうであった。 「イヅチがお前なんかに負けるわけがないんだ!」 ユズキが、シルエットの剣を掴んだ。 「まあ、そのイヅチってのが馬鹿で助かったぜ?」 「なに!」 「確認もせず、こうやって、剣を掴んじまったんだからな!」 シルエットとユズキの周囲にある空気が凝縮する。 「――そんな、卑怯だ!」 ユズキが、剣を離そうとした矢先、シルエットがにまりと歯を剥き出して笑う。
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