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「それは、そんなことさせない!」
食って掛かるクレアをシルエットは眺める。
「あ? なんでだよ」
「それは、言えない」
クレアは、首を振り、口を閉ざした。
そこに、気配は現れる。
シルエットが、立ち上がると同時に、寝ていたラヴィアも起き上がる。
クレアが、シルエットの背後を凝視する。
「それ、返してくれませんか。こっちも必要なので」
声の主は、人間ではなかった。
焚き火の炎が、敵の姿を映す。
「ユズキ――」
クレアが、狐耳の男をそう呼んだ。
「嫌だね」
シルエットが、クレアの前に立ちはだかるとユズキの顔が狐に変わる。
「お前、イヅチを殺した奴だな!」
ラヴィア達の前で身体を変形させたユズキは、叫び、シルエットを狙った。
シルエットは、クレアを掴み、ラヴィアへと投げて、その攻撃を交わす。
「あ――あんときの番人か。単品なら丁度良い。決着付けようぜ!」
シルエットが、剣を抜く。
「シル! 無茶はするな!」
ラヴィアが、言うが最早、戦闘は避けられない。
「うるせえ、外野は黙ってろ!」
シルエットが、怒号を飛ばし、ユズキの振りかぶる爪を避けていく。
ユズキの爪は、空を切るだけでなく、シルエットの衣服を確実に捉えていた。
シルエットの胸元は、先程の一撃にやられ薄く血が滲んでいる。
動きとしては、ユズキと互角だが、ユズキの方が僅かに間合いを狭めていた。
「ちょこまかと!」
ユズキが左右に小刻みにステップを踏み、シルエットの剣の軌道を確実に乱す。
ユズキの速さに着いていくには、体力勝負となりそうであった。
「イヅチがお前なんかに負けるわけがないんだ!」
ユズキが、シルエットの剣を掴んだ。
「まあ、そのイヅチってのが馬鹿で助かったぜ?」
「なに!」
「確認もせず、こうやって、剣を掴んじまったんだからな!」
シルエットとユズキの周囲にある空気が凝縮する。
「――そんな、卑怯だ!」
ユズキが、剣を離そうとした矢先、シルエットがにまりと歯を剥き出して笑う。
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