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「しかも、お前、あれだってな。俺が利き手を切り落としたせいで、お得意の幻影術が使えねえんだよな!」
カプスは、シルエットに煽られ、自分のペースを完全に乱す。
「魔族のくせに」
カプスが言い返したつもりの一言は、シルエットを逆上させる。
次の瞬間、カプスの腹部に強烈な蹴りが叩き込まれた。
カプスは、その場に崩れた。自慢の羽根も動かない。
「元一軍の頭も形無しか?」
シルエットの挑発にカブスは、剣を握り返して斬りかかる。
そのカプスの後ろで、カチャリとなにかが外れた音がした。
「しかもな。お前さんが持ってるその剣。斬るより突き刺すほうが向いてるぜ?」
音に気を取られたカプスにしてみれば、シルエットのそのぼやきは、完全に雑音であった。
カプスは、音に振り替える。
ケテウスの篭の扉が開いていた。
「ほら、余所見すんな!」
シルエットが、そこへ来て剣を抜いた。カプスは、身体を反転させたが、片方の羽根がシルエットの剣の餌食となる。蝙蝠の羽根は、剣に切り取られて、地に落ちた。
痛烈な痛みと、ここまで来ての全ての裏切りにカプスは、吼えた。
カプスの声は、空気を揺らす。
その咆哮のまま、向かったのは、繋がれたフレアの元だった。
シルエットの一撃が、カプスの背を抉る。
それでもカプスは、フレアを握り締めて笑った。
「その者を殺せ!」
ロウスの声が辛辣に響くその中で、カプスは、転移した。
「フレア!」
クレアの悲痛な叫び声が、響く。
シルエットは、剣を鞘に納めるとクレアの方へと駆け出した。
「シル! もう、此処には用はない! 山へ急ごう!」
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