紫炎の騎士 3部

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「それでは、制限時間が参りましたら、迎えに上がります」 監守は、そう言って部屋を出ていった。 「早速で悪いんだけど。神主様が何処へ向かったか教えて」 ティラは、監守がいなくなるのを見計らい、単刀直入に話を切り出す。 穴が空いているので、会話は容易にできたが相手の顔までは見ることができない。 「神主? 五日前に来た女か?」 「そう。そのときのことを聞きたいのよ」 男の返答にティラは、言った。 「そんなことより、女。お前も悪党に復讐する仲間を止めに行くつもりか?」 ティラは、アルエラが嘘を言って情報を引き出したと即座に理解する。 「ええ、止めようとしたのだけれど無理だったわ」 「お前と神主の関係は?」 「仲間よ」 「神主は、アルエラと言ったか?」 「ええ。どこへ行ったか教えて欲しいのよ」 麻薬売人だった男は、沈黙した。 部屋の空気は重い。 時間の流れさえわからなくなる。 筆記者以外の音もしない。 「あの女(アマ)な。俺に呪を施していった。詳しい居場所は教えられねえ」 男が、深く深呼吸をして言った。 「北、南などの方位も答えられない?」 「俺は死にたくないね。だから、答えない」 「お願い。どうしても知りたいの。伝える方法はあるはずよ?」 ティラは、懇願する。 「俺が死んだらあんたは犯罪者だ」 麻薬売人は、笑う。 「急いでいるの」 「それは、俺が死んでもいいってことか!」 麻薬売人は、言った。 「そんなこと、思っていないわ。アルエラさんが行った場所と逆位置を教えて」 ティラは、麻薬売人の言葉を否定し、質問を代えた。 麻薬売人が、一瞬、笑いを止める。 「あんたは、巫女にしとくのもったいねえわ。それならいいぜ。北にあるコムルス地方にでっかい河がある。その河を東に進んだところに大都市がある」 「大都市――カルムッタ?」 「そう。そこにある教会を目指したよ。俺はこれしかいえねえ」 麻薬売人は、疲れたように言った。
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