2章 合流

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2 少し時間は遡る。 ソイヌの祠の周辺は、色付いた落葉樹に囲まれていた。一面が黄色という、不可思議な空間にソイヌは、ひっそりと立っている。銀杏を不吉と象徴する理由のひとつが、バイカル山のその情景を物語る。 また、バイカル山の季節は、異常で、夏に雪が降ることもある。 風は、南風。ミネラグルンの銀髪を靡かせる。 ミネラグルンは、封印石を手に祠の中を覗いた。 蝋燭の無くなった場所に、封印石を置いて様子を眺める。 封印石は、燭台の上で蒼白い光を放ち、ソイヌを耀かせる。 それはそれで、芸術的であった。 ミネラグルンは、その耀きの前で最後の鍵を奪う計画を練る。 封印石だけでは、通路は開かないことをミネラグルンは先程気が付いた。 遅すぎるくらいであった。 ミネラグルンは、ソイヌから身体を抜いて、考える振りをしながら歩き回る。 本当のところ、鍵の正体は巫女ではないかとミネラグルンも勘違いを信じていた。 巫女があのときの娘であることをミネラグルンは知っていた。 だから、その巫女が攻めてくるのを待つか、探しに出るかで迷っていた。 だが、燭台に置いた封印石は、かっちりとはまって取れない。
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