2章 合流

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「わかったわ」 ミネラグルンは、ティラの言葉を疑った。 答えたティラが、ソイヌへと近寄る。 ミネラグルンは、あまりのことにティラを視線で追いかけるのがやっとであった。 ティラが、ソイヌの前まで来た時であった。 佇んでいたアルエラの傍らにできた、黒い空間からカプスが飛び出した。 カプスの手には、紅蓮の髪と瞳を持つ妖精が握られている。 アルエラが飛び退き、ティラが振り替える。 ミネラグルンは、カプスの状態を嘲笑う。 「見ない間にぼろ雑巾みたいになっちゃって。こんな場所まで何しに来たの?」 「煩い――っ、そこを退け!」 完全に血走ったカプスの目が、ミネラグルンを睨んだ。 「僕に命令するの?」 ミネラグルンは、反射的に半歩踏み出す。 そこにティラが、魔消刀を抜いた。 「動かないでくれる?」 冷やかな言葉が、ミネラグルンに突き刺さる。 「傷を治してやろうか?」 動きを止めたミネラグルンを無視するようにアルエラは言った。 「そんなことができるのか?」 カプスが、妖精を握り締めたまま聞き返した。 「できる。そして、奴を倒す」 アルエラが、眼鏡越しに掌を翳すと小さな光が瞳から飛び出した。 紅い光は、アルエラの手に収まり、一本の杖へと変形する。 ミネラグルンは、その杖を知っていた。 迅速に、ミネラグルンはアルエラに攻撃を仕掛ける。カプスの怪我を治されては困る。 「氷雨!」 氷の雨が、アルエラを襲う。 ミネラグルンは、ティラとソイヌから離れた。 ミネラグルンが仕掛けた攻撃をアルエラが、杖で凌ぐ。 ミネラグルンは、腕を組んだ。 「その杖、どうしたのさ」 「答える義務はない」 アルエラが、等身大の杖で地を叩くと、杖は、縮んだ。 「貴方の相手は私よ!」 控えていたティラの魔消刀が、ミネラグルンを狙う。 ミネラグルンは、更に、距離を動くことになった。 魔消刀の切っ先が、ミネラグルンの衣服を僅かに捉えている。 着ていた外套の腹辺りに斬り込みが入る。 撤退と言う言葉も閃いたが、儀式の成功を前にしてそろもどうかと欲が出る。 ミネラグルンは、アルエラを視界に留めながらも立ち向かってくるティラの魔消刀に対抗した。
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