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「ありがとう」
ティラは、即座に席を立ち、小部屋を抜け、外で待っているラヴィア達と合流する。
ノームの夜は、寒い。
ラヴィアの提案で、三人は宿に入った。
与えられた三人部屋で、備え付けの机を囲む。
丸テーブルに広げられたのは一枚の白い紙であった。そこにシルエットが、羽ペンで地図を描く。それは、手慣れたものであった。瞬く間に、麻薬売人が言った地図が出来上がる。
「で、この逆地方の地図が欲しい分けだ」
シルエットが、更にもう一枚の紙を出す。
定規を上手く扱い、設計士差ながらの早さで、地方地図を作る。
それは、簡易的なものであったが、場所を知るだけなら上敵と言える部類であった。
「シル。貴方、相当、旅をしているのね?」
ティラは呆然と訊ねた。
「世界地図の愛好家が居てな。良く遊びに行って眺めていたのが役にたっただけの話だ」
シルエットが、誇らしげにペンを置く。
「この最初の地図と後からの地図を重ねてみるとアルエラさんが向かったのは、小都市――イザリアか。ノームから何日くらいになるんだろう?」
「馬をかっ飛ばして三日だ」
ラヴィアの疑問にシルエットがあっさり答える。
「花弁は簡単には使えないものね。明日にでも出発しないと」
ティラは、地図を見た。昔から鳥籠で暮らしてきたティラには広すぎる。カルムッタの名前が出てきたこと自体奇跡であった。
ちなみに、カルムッタは、麻薬大国で、日常でも麻薬を売り捌いている。平気で道端で吸っている魅惑の都市であった。
その真逆に位置する小都市、イザリアも治安は悪い。都市を治める頭(リーダー)の選挙の時、派閥争いが起きる。それも、死者が出るほど危険な戦いだ。選挙はその戦いで決まる。
「イザリアでは、選挙の真っ最中」
ロウが、ぽつりと言った。
「危険な時期に乗り込むのか」
ラヴィアが、悩むように言う。
「アルエラさんを捕獲して、ミネラグルン情報を集めましょう」
ティラは、言う。
「そうだけど、頭を決めるのに民間を巻き込むなんて」
ラヴィアが、言う。
「違う違う。民間が勝手に争う。民間はお祭りだと言ってきかないぜ」
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