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ママはリビングのカーペットの上でストレッチしながらテレビを見ている。
「ソラ、今日から始まる月9ドラマおもしろそうよ。『叶わぬ恋』だって。いやん。」
40歳には見えない美貌と言動。
どうしてこんな色気のある女からあたしみたいなのが産まれたのか不思議に思う。
「ママが今のあたしくらいの年の時って彼氏いた?」
ママがこちらを振り返って意外そうな顔をしている。
「ソラがそんなこと聞くの珍しいわね。高2の時は一個年上の先輩と付き合ってたかな、たしか。もしかして彼氏できた?」
ううん、と首を横に振って、口の中に残るバターの味をオレンジジュースで流し込む。
「ソラもいよいよ恋のお年頃かな?恋愛のことならママに相談しなよ。なんだって相談のってあげるから。ママこう見えて、色々な恋愛の経験してるんだから。恋するとね―――」
あのー、『こう見えて』というより『どう見ても』なんですけど?
「はいはい。行ってくるねえー。」
まだまだ恋愛論を話し続けるママにそう言い残して、あたしは家を出た。
自転車をこぎながら、いつもと変わらない町並みを見渡す。
4月の爽やかな風に吹かれながら、ママが高2の時に付き合っていたという男性を想像してみる。
きっとパパよりイケメンだ。(笑)
あたしも今日から始まる高2生活で彼氏ができるといい・・・かな。
ふと、あの人のくしゃっとした笑顔が頭に浮かぶ。
誰にも話せない甘酸っぱい想いを抱きながら学校へと向かった。
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