さくらの記憶

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俺は小さい頃から人には見えないモノを見ることができた 何故かは分からない 遺伝かもしれないしそうじゃないかもしれない そんなことは親を知らない俺には調べようのないことだ ちなみに今俺を見ている連中は、その普通の人には見えない奴等だ こいつらは、ここみたいな人があまり来ない所に集まる 最悪なことに俺も人が多い所が嫌いで、よくこいつらに出くわすはめになる 自分のことが見えているとわかるとよってきたり、脅かしてきたり、襲ってきたりしてくる奴等が多い そうなると面倒だから基本は見えないフリをして過ごす 「ねぇ」 いきなり声が横から聞こえる 他の奴らみたいなひそひそ声じゃない 気になって声のする方を見ると 「あなた、こんな所で何してるの?」 人間の女だった 驚いてぼうっとした俺に彼女はこれまた驚くような早さで目の前に詰め寄ってきた 「あなた、こんな所でなにやってるの? 死にたいの?」 訳がわからん なんでここに来ただけで殺されなきゃいけないんだ 彼女はいまだにいろいろな言葉を捲し立てている とりあえず、落ち着かせないと話が進まないな 「落ち着け、お前は何が言いたいんだ 俺が死にたいか? 何の話だ」 そこで、やっと彼女の言葉の嵐が止む 何か熱弁でも奮っていたのか、拳を振りかざしているポーズでこちらを見る 「…………………」 「…………………」 静寂の中 8秒(もっと長く感じられたが)、彼女はジーっと俺をガン見している 俺が彼女を強く睨むと、彼女は軽く目を見開いた そして、薄く微笑んだ 「なんだよ」 その顔にイラついた俺は抗議の声をだす 「あなた」 彼女が言葉を止めて、じっと俺を見つめる さっきとは違う、真剣な眼差しに、俺は何も言えなくなる
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