13人が本棚に入れています
本棚に追加
『現在、交戦中です。そちらへの救援は不可能』
最適化された思考に、ノイズが走る。
この程度の奴等にてこずる味方への苛立ちと、殺された仲間への悲しみ。
戦闘後に呑みに行く約束を破られるのは一体何回目だ 。
『アルデバランがそちらへ向かっています。到着まで30秒。持ちこたえて下さい』
「……了解」
会話をしながら殺した三人目から大剣を引き抜く。
黒い機体が崩れ落ちるのを見つつ、思考を巡らせる。
30秒。
とてつもなく長い時間だ。
特に、周りを囲まれている今は。
視認で周りを見渡す。
5体。
しかし、まだ増える。
俺の乗るシリウスは汎用性に長けた機体だ。
どんな状況下でも一応は動けるのだがその分、操縦者の技能で得手不得手が如実に表出する。
俺は対多人数は嫌いだ。
しかし、やるしかない。
戦わねば、俺が敵機体どもになぶられて死ぬだけ。
シリウスを、敵の群れに突っ込ませる。
一体のプロキオンを、大剣で突く。
大剣は寸分違わずメイン・コアを貫き、搭乗者の命を刈り取った。
しかし、次の瞬間。
シリウスを強い衝撃が襲う。
「ぐっ……!」
響く衝撃に耐えながらそちらを見ると、一体がこちらへ体当たりをした所だった。
すかさず、サイドステップで距離を取る。
大剣で右足をもぎ、胸部分を蹴り飛ばす。
敵機体が仰向けに倒れた所を、シリウスの体重を乗せた一撃でその胸を貫く。
しかし、間髪入れずに左右前の三方向から襲い来る曲刀。
一発を大剣でいなし、バックステップで残りを回避する。
「"エクスキャノン"」
ボイスコードを発すると同時、シリウスの右肘から先が大砲へ変換される。
敵機体三機へ右腕を向け、一瞬の溜め。
そして、大砲から巨大な光弾が発射された。
大爆発が眼前で起き、シリウス含む四機がそれぞれ別の方向へ吹き飛ぶ。
しかし、全員すぐに立ち上がる。
先程も言ったが、機体の装甲はこのくらいでは破れない。
俺がやったのは、あくまで爆風による緊急回避に過ぎず、救援が来るまでの時間稼ぎに過ぎない。
ふと周りを見渡すと、目の前のプロキオンの相手をしている間に敵が更に増えていた。
総数17体。
レーダーに映っていた敵影の全てだろう。
全て量産型プロキオン。
右手にはお決まりのような曲刀を装備しており、黒い機体の胸元に血のように赤いメイン・コアを讃えている。
最初のコメントを投稿しよう!