アルデバラン

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『現在、交戦中です。そちらへの救援は不可能』 最適化された思考に、ノイズが走る。 この程度の奴等にてこずる味方への苛立ちと、殺された仲間への悲しみ。 戦闘後に呑みに行く約束を破られるのは一体何回目だ 。 『アルデバランがそちらへ向かっています。到着まで30秒。持ちこたえて下さい』 「……了解」 会話をしながら殺した三人目から大剣を引き抜く。 黒い機体が崩れ落ちるのを見つつ、思考を巡らせる。 30秒。 とてつもなく長い時間だ。 特に、周りを囲まれている今は。 視認で周りを見渡す。 5体。 しかし、まだ増える。 俺の乗るシリウスは汎用性に長けた機体だ。 どんな状況下でも一応は動けるのだがその分、操縦者の技能で得手不得手が如実に表出する。 俺は対多人数は嫌いだ。 しかし、やるしかない。 戦わねば、俺が敵機体どもになぶられて死ぬだけ。 シリウスを、敵の群れに突っ込ませる。 一体のプロキオンを、大剣で突く。 大剣は寸分違わずメイン・コアを貫き、搭乗者の命を刈り取った。 しかし、次の瞬間。 シリウスを強い衝撃が襲う。 「ぐっ……!」 響く衝撃に耐えながらそちらを見ると、一体がこちらへ体当たりをした所だった。 すかさず、サイドステップで距離を取る。 大剣で右足をもぎ、胸部分を蹴り飛ばす。 敵機体が仰向けに倒れた所を、シリウスの体重を乗せた一撃でその胸を貫く。 しかし、間髪入れずに左右前の三方向から襲い来る曲刀。 一発を大剣でいなし、バックステップで残りを回避する。 「"エクスキャノン"」 ボイスコードを発すると同時、シリウスの右肘から先が大砲へ変換される。 敵機体三機へ右腕を向け、一瞬の溜め。 そして、大砲から巨大な光弾が発射された。 大爆発が眼前で起き、シリウス含む四機がそれぞれ別の方向へ吹き飛ぶ。 しかし、全員すぐに立ち上がる。 先程も言ったが、機体の装甲はこのくらいでは破れない。 俺がやったのは、あくまで爆風による緊急回避に過ぎず、救援が来るまでの時間稼ぎに過ぎない。 ふと周りを見渡すと、目の前のプロキオンの相手をしている間に敵が更に増えていた。 総数17体。 レーダーに映っていた敵影の全てだろう。 全て量産型プロキオン。 右手にはお決まりのような曲刀を装備しており、黒い機体の胸元に血のように赤いメイン・コアを讃えている。
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