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空気抵抗を考慮したシャープな形体。右手には西洋の騎士が持つような"ランス"が握られている。
ヒョウを思わせるそのフォルムは人型、というより獣人型と言った方がしっくりくる。
黒い機体の群れの中で光る鮮やかな紅色は、闇夜に光る恒星のようだ。
その胸には碧い宝石のようなメイン・コアが嵌まっている。
この機体の名は「アルデバラン-origin」。
通称アルデバラン。
俺達の軍に一機しかないエースパイロット専用機である。
『おっ待たせー。中々良いタイミングじゃない?』
俺の頭の中に、直接響くような声が聞こえた。
体内に注入してある通信用ナノマシンによる思考通信だ。
頭に響いたその声には何処か、少女を思わせる幼さがあった。
この女の名は瑞茄 夕季(みずな ゆうき)。
俺達の部隊のエースパイロットだ。
夕季は五人殺した直後だというのに、楽しそうにしている。
平常運転な夕季に、俺は短く告げた。
「遅い」
『えぇー。これでも全力で飛ばして来たんだけどなー』
そう言って、夕季は苦笑する。
顔が見えている訳ではないが、声色で分かった。
和やかに話しながらも、アルデバランの動きは止まらない。
シリウスとの性能の違いもあってか、続けざまに二体のプロキオンを沈めている。
『まぁ、とりあえず、こいつら皆殺しにすれば良いんだよね?』
槍をプロキオンから引き抜きつつ、無邪気にそう言い放つ夕季。
性格は推して図るべし。
「mark-Ⅲとヴェガもピンチらしい。早急に片付けて救援に向かうぞ」
『競走する?』
夕季の言葉は無視し、俺はプロキオンの群れに飛び込む。
俺の沈黙を拒否と察したか、夕季もそれ以上は言わずに黙って右手の"ランス"を手近な敵に突き刺した。
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