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あたしは、かすみんとつるまないとクラスに居場所がない気がしてた。
修学旅行とか体育の班分けとか、給食一緒に食べるグループとか。女子って特に、そういうの大事で。無意識にそういうの感じとっては、弾かれないように必死に頭を使う。
おんなじような人みつけて、隣で笑ってるだけなのに。一人じゃないってだけで、なんかホッとする。
一人は、嫌だから。惨めで寂しいのは、嫌だから。
珠子みたいには、なりたくないから。
渡り廊下からふと空を見上げると、雪が舞っていた。細かいゴミが舞っているかのように、グレーと白がチラチラと混ざり合っている。
重たくて静かな何かが、降ってくる。
あたしは、きゅっと目を閉じた。
雪は、勝手に降ってくる。あたしの意思とは関係なく、降り積もっていく。
とめることなど、できないんだ。
かすみんは、いつも少し離れたところから珠子の様子を伺っている。
自分がいじめた相手の反応を、毎回確かめたいみたいだ。からかったり罵倒するでもなく、ただ遠くから確かめている。
あたしは、そんな彼女を犯行現場に戻る馬鹿な犯人のようだと思っている。別にここまでしなくてもいいのに、とも思う。あくまで、思うだけだけど。
珠子は、「ブスデブ死ねクズ」「キモいから消えろ」といった言葉で埋まったページを開きながら、スケッチブックを握り締めていた。
彫刻のように固まった表情をして、しばらくそこに立ち尽くしていた。そこだけ時がとまったかのようだった。
それでも彼女は必死で立っている。
泣いたりしないように、ばれてしまわないように。
あたしは、思わず珠子から眼をそらした。
美術室の机は赤や黄のペンキで汚れ、削られたような跡がいくつもあった。
ささくれみたいにザラついた表面をみていたら、何だろう、心が余計にざわついた。
みんなの話し声が、絵の具の匂いと混ざり合って、あたしの中で大きく響いて。耳障りだった。
あたしは悪くない、
悪くない、
悪くない、
悪く
ない・・・・
そう唱えては見るけれど、あたしは知っている。
傷つける術を、知っている。
傷ついているあの子を、知りすぎている。 ー完ー
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