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「この前よりはいいかもねっ」
私は心の中を見透かされたくなくて、ぶっきらぼうに答えた。
ルーカスはちぇーっと呟いている。
「さて、と。時間大丈夫?」
「あ、そろそろ帰らないとやばいかも。うち門限十時なんだ」
「そっか。月水金は塾なんだよね? その日はここにいるようにするからまたおいでよ。そんでまた描かせて?」
彼の言葉にうん、と頷く。
「そして日増しにうまくなってく俺に驚くといい!」
ルーカスがそう言って、鉛筆で私を指した。
「あははっ! なんじゃそりゃ! うん、でも楽しみにしてる。じゃあまたね!」
ちょっと面食らって答えると、ルーカスも笑っていた。そして手を振って別れる。
もやもやしていた毎日に少し光が差したかもしれない。
「初めて笑ってくれた……」
その呟きを私は知らない。
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