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「ってへたくそ!」
思わず言ってしまってから慌てて口を抑える。そろーっと彼のほうを見るとどよーんと落ち込んでいた。
「俺さー、人物画は下手なんだ……。風景画は得意なんだけど」
ちらりと横に視線をやる。彼の隣に並べられた絵はどれも風景画で、確かにうまかった。どこまでも続く地平線。色付いた山々。高台から見下ろす町並み。そのどれもが美しかった。いや、美しいなんて言葉じゃ表し切れない。
「ニガテ克服したくてここで描いてたんだけど、ごめんねー。せっかくハッピーになってもらいたくて笑顔にしたのに……」
スケッチブックの中の私は満面の笑みだった。
「ハッピーって」
彼は柔らかく笑った。……気がした。なにしろサングラスで表情は分からない。
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