第1話

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そんな意固地な私を見下ろして、 チッっと舌打ちするオハギさん。 無表情に舌打ちって、威圧感凄いの知ってます? 負けないけど。 内心、可愛げのない自分にションボリしつつも、無敗の鉄仮面は崩れない。 何も揺らぐ必要はないんだ…と自分を叱咤する。 噂程度に負けない自信あるし。 無表情なんか恐くないし。 それに、もう逃げたりしないだろ?って感じに歩き出す背中は、むしろ…腕を掴まれるよりも拘束してくる。 駐車場に着くと、顎で促がされる。 毎度毎度の事で、それを当然だと思いたくない。 でも、何となく落ち着いて行く日常の習慣のように、オハギさんの車の助手席に回る。 無表情さんの愛車は、古くて赤いmini。 センサーなんて無いから、運転席から乗り込んだオハギさんが中から手動で開けてくれないとカギは掛かったまま。 そろそろ慣れたその流れに、聞き慣れて来たminiの閉まる時の音に、習慣化してしまう日常。 上司と部下が、習慣化するほど一緒に帰るって、もう、噂を実話にしてるよね? 噂になるような事は何もないのに。 こういうのがビミョーな立ち位置で、ゴチャゴチャ考えちゃうから虫唾が走る。 走り出したminiが、大きな音を立てる。 その音に負けそうな声で呟く。 「もう、甘やかさないで。」 グラグラしてしまうから。 1人で帰れるし。 それだけじゃない。 他の誰かより、一歩も二歩も近寄らないで。 意図を中途半端に隠して。 言い訳しなよ。 無表情を崩して、その本心を伝えてくれば、キチンとした答えで拒否してやるのに。 無駄に私の脳内を占領する。 甘い言葉も態度も見せず。 そのやり口にイライラする。
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