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電話の音と、キーボードを叩く音が響く。
私は、音のしないコピー機の前で、非常に焦りながら其れらの音を聞いていた。
必要だから使ってるのに、いつも私が使い始めると紙が詰まる年季の入った機械。
だから、いつも「遅せーよっ!」と怒られるんだろうな…。
違うんだよぉ…。
紙が詰まるから、いつもしゃがんで、変な格好で覗き込んで笑われる。
お気に入りの靴に…変な皺がすぐに入ってしまうんだ。
そして、つまりは、詰まりで自分の仕事も進まない。
結果、会社での評価もつまらない感じ。
親父くさい思考に、「詰まらねぇ…」と呟いてしまった。
「えっ?モナカさん?今、詰まらねぇ…って言った?」
話かけて来たのは、私の上司のオハギさん。
いや、萩 天音(はぎ あまね 29歳)。
いい年の男性が甘ったるい名前…。
なんて突っ込んでも、彼のせいではなく、紛れもなく両親の愛情。
萩さんがオハギさんと呼ばれているから、森中澪(もりなか みお25歳)の私は、ついでにモナカさんと呼ばれている。
言う迄もなく…アンコ繋がり。
これまたよく分からず詰まらない。
「はっ?言うわけないですし。」
言っていようとなかろうと、そんなのは取り上げなくていいんだよ。
面倒くせぇ。
オハギさんを無視して、コピー機に手を入れる。
「なぁ、モナカさん。」
「はい、オハギさん。」
「お汁粉食いに行かね?」
「はっ?甘ったるい。」
「なら、ラーメン行かね?」
「まだ朝の10時なので、お腹が空いてなくて、お返事しかねますが?」
仕事してもらえます?
暇なら、詰まり直して、コピーもお願いしますけど?
上司だけど、尊敬もしてるけど…。
奇妙な会話を吹っかけてくるオハギさんに、そろそろ飽きて来た。
なんとか動き出したコピー機。
無駄にした時間を、取り戻さないと…本気ヤバい。
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