第1話

4/22
前へ
/22ページ
次へ
***** 「はぁぁぁ~。疲れたぁぁぁ…。」 近所の食堂で、盛大なため息が、遠慮もせず零れた。 塩サバ定食を白ご飯大盛りで注文したら、一気に昼休憩モード突入。 隣の席の工事現場の若い作業員さんは、大盛り設定にせず、普通を注文する声が聞こえる。 最近の男子は食が細いなぁ…なんて思いながら、その男子達には、よく食う女は金がかかるなんて思われる。 自分のぐらい、自分で払いますけどもね? そんな事をブツブツ考えていたら、塩サバ定食が普通ご飯を引き連れて到着した。 同時に、若い作業員さんのトコには大盛りのご飯が到着。 「…えっ?大盛り頼んでないんですけど…。」 戸惑う作業員さんの声が聞こえる。 …またか。 多くの人が持つイメージに、逆行してるんだろうな私は。 「すいませーん!私、ご飯大盛りで頼んでたんですけどぉ…。」 そろそろこんな周囲のイメージにも慣れて、そのイメージがもたらすゴチャゴチャへの対応にも慣れて来た。 若い作業員さんと目が合い、あはははっと笑ってみる。 「間違われたみたいなんで、チャチャっとトレードしちゃいますかね。」 そう言って、普通ご飯を差し出す。 お前が大盛りかよっ!ってドン引きしてる作業員さんから、大盛りご飯をささっと奪い取り、割り箸を勢いを付けて割る。 今日も真ん中では、割れてくれない。 お味噌汁は、大根とお豆腐と油揚げ。 うん、安定の美味さだな。 イメージなんかには負けないけど、お味噌汁のイメージには裏切られない。 食べ終わってお店を出ると、さっきの普通ご飯の作業員さんが居た。 こちらには気付いていない。 その背中に、『沢山食って、沢山働くんだ!』って、呟く。 誰に言い訳してるんだか…。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加