第1話

8/22
前へ
/22ページ
次へ
***** ふぅぅぅ~。 時計を見ると、21時半。 ま、そろそろ撤収かな。 残業を切り上げ、そそくさと机を片付ける。 無駄に残業しても会社からは嫌な目で見られるし、ここら辺がいいトコ。 残業に集中し過ぎで食べ損ねた冷たい鯛焼き。 君は、一緒に我が家においで。 温め直してあげようね。 まだ集中しているオハギさんの邪魔をしないよう、そぉっと鞄に仕舞う。 そして、そぉっと鞄を抱えたら携帯が震えた。 ー10分待てー あぁ…またか…。 パソコンを見詰める目がこちらをチラ見した。 私は、両手を胸の前でバッテンの形にした。 1人で帰れるっちゅーの! まだ電車もあるし。 そうやって、甘やかしてくんなっ! 自分の意志を示し、出口に向かうと、隣りの佐藤さんが…。 「頼む…。」 ボソボソと呟いた。 でもさ、あらぬ誤解されんのよ? 定期の意味無いし。 監視されまくってるみたいで、息苦しいんだよね。 妙にむず痒くなるし。 「頼む…。また残業増やされるんだよぉぉぉ。」 知らねぇですけど? オハギさんの佐藤さんへの対応は、私のせいじゃなくない? ゴチャゴチャしてたら、腕を掴まれてしまった。 「捕獲。…佐藤も、早目に切り上げて帰れ。」 強引に引っ張られて歩く。 振り返ると、ホッとした表情の佐藤さん。 明日は、完全無視してやるからなーっ! 佐藤さんをキッと睨み付けた後、腕を掴む手を振り解いた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加