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「また、会長と相棒に逃げられたのか?由羽」
生徒会室に向かう途中、俺の二倍の荷物を抱えた金やんが聞いてきた。
職員室では口うるさい教師もいるので名字で呼んでるけど、金やんは普段は名前かあだ名で生徒を呼ぶ。
「えぇ。毎度のごとく。最低最悪最強(恐)の会長と頼りにならない相棒ですよ」
サボり魔で面倒くさがり。そのくせ目立ちたがり屋で大胆不敵で我が儘な典型的な俺様。
だがしかし!成績優秀、スポーツ万能でこの学校では教師も太刀打ちできない。
もはや生徒たちから、会長通り越して神くらいに思われてると言っても過言ではない。
正直、会長が苦手な俺はサボってくれてる方がありがたかったりする。
そして、相棒。
俺の幼なじみで産まれた時から家はお隣。幼稚園から今までずっと同じクラスという奇跡的な位、縁が深い。
誰よりもお互いを分かりきってる親友でもある。
周りに誰もいないのを確認して金やんに近寄ると、金やんが不思議そうな顔をして俺を見る。
「金やん、凜先輩と最近どーなんですか?」
小声で耳打ちするように聞くと、金やんは苦笑いしながら言った。
「学校ではこの話無しだって言っただろ?どこで誰が聞いてるかわからないんだから」
そう言いながらも答えてくれる。
「順調だよ。日曜に映画観てきた。
それより由羽はどうなんだ?
お前が誰かを好きになったなんて話を全く聞かないけど?」
「だって、いい人がいないから…」
なんて言うのは嘘。
俺が好きなのは……、いや、好きだったのは。
「お疲れさまです。荷物重かったでしょう?金守先生。由羽ちゃん」
生徒会室の扉を開けて出迎えてくれたのは、今話していた金やんの恋人、水月 凛<みつき りん>。
一学年上の先輩。美人でおしとやかで長いサラサラの黒髪が似合う正に大和撫子。この学園のマドンナ的存在で、――俺の好きだった人。
凛先輩がいたから、生徒会に入る決意ができた。いなかったら、あの会長のいる生徒会になんか入らなかっただろう。
でも、とっくに諦めはついてるけどね。
凜先輩の相手が金やんなら諦めもついたし、納得できた。
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