風吹きて

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「好きな子ができたら相談しろよ。協力してやるから」 荷物を置いて俺の背中をポンッと軽く叩いてニコッと笑う。 「相手が男でも気軽にしてくれ。いろいろアドバイスしてやるから」 「もう、金守先生ったら」 「恋愛に性別も年齢も職業も関係ないからね」 凛先輩の困ったような笑顔に、金やんが笑顔で力説する。 「俺、ノーマルですから」 「あからさまに拒否しなくてもいいだろ?もしかしたら分からないぞ?」 「俺はもう。男に犯られるのなんか嫌なんです!」 あの日の出来事が頭をよぎって、忘れようと必死になって叫んでしまった。 「悪い。無神経だった」 金やんが真面目な顔で謝りながら宥めるように俺の頭を撫でる。 「いつか素敵な女性が現れるわ。由羽ちゃんみたいな男前、放っておくわけないもの」 凛先輩に言われると嬉しいような悲しいような複雑だな。 「男も放っておかないけどな。こんなに可愛い子。凛との出会いがなかったらとっくに俺が」 「……輝羅さん。いい加減由羽ちゃんを触るの止めてあげてくれませんか」 絶対零度の冷たい声色にすぐさま撫でるのを止めた。その声色に金やんだけでなく俺まで恐怖で凍りついた。 大人しい人がキレると怖いって本当だな。 てか、金やんは何を言おうとしたんだろ。 「由羽ちゃん?金守先生の言ったこと気にしないでね」 「はい」 怖い。 凛先輩の笑顔がすごく怖い。 「由羽ちゃん。男の人には気をつけた方がいいわよ」 「はい?」 凛先輩が神妙な面持ちで俺を真っ直ぐ見る。 「由羽ちゃんは綺麗で可愛いから」 貴女の方が綺麗なんですけど。 「文化祭は特に気をつけてね。お祭り騒ぎに乗じて良からぬこと企む人多いから」 女の勘なのか、経験からの助言なのか。 凛先輩の言葉はとても重みがあった。 でも、気をつけていても巻き込まれる時は巻き込まれるものらしい。 嫌な予感はしてたんだ。
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