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全く避けようともしなかった雷照に対して、綺が驚きの声を上げる。
「ヴぁぁぁっ!」
雷照は大声でうめきながら、胸に腕が突き刺さっているのにもかかわらず、綺を引きずりながらさらにこっち側へ突進してきた。そして、僕の前で限界が訪れたのか、膝をついて僕の右腕を残った左腕で掴んできた。
「ふっ、はははっ! お前らは、ぐっ・・・ お、わりだ・・・」
不気味な事に雷照は僕の方を向いて笑いながらそう言った。そしてその直後、体が急に熱くなって、僕はしゃがみこんだ。
「ぐ、あああああ! 熱い!」
何をした! 僕は綺を見る。すると、綺もしゃがみこんでいた。
「くっそ、悪あがきをしやがって!」
綺はそう叫ぶと力を振り絞って立ち上がり、
「はっ!」
と言って、僕の方へ火の玉を放った。
「なっ!?」
まさか見方から攻撃されるとは思わなかったから、僕は避ける事もできずに直撃し、後ろに飛んで行く羽目になった。
数メートル離れた所にある木に当たって倒れた僕は、何とか起き上がる。不思議な事に、さっきまで体を襲っていた熱はすっかり引いていた。 ・・・そうだ! 綺はどうなった? 僕は急いで綺のいる方を見る。
「おい・・・」
そこには綺と雷照が倒れていた。一体、綺に何が起こったってんだ? なんで綺は倒れてる?
「綺!」
僕は叫び、綺に駆け寄る。そして綺を抱きかかえようとしたその時、
「綺に触るんじゃない!」
という怒鳴り声が聞えて来た。僕はとっさに後ろを振り返る。
「父、さん・・・?」
そこには、僕の父である友屋白(はく)がいた。
「なんで、父さんがここにいるの?」
「色々と理由があるんだ。追って話すよ我が息子よ。そんな事よりだ、まずは目の前の事に目を向けるんだ。綺を救わなくちゃならん。 ・・・あ、そうだ! 言い忘れていた事が一つ。俺はこの世界の友屋純の父親、つまりお前の父親だ。対照世界のお前の父ではないぞ」
「いや、それは何となく分かるけど、ほんと何となくだけど・・・ というか、そんな事より! どうやったら綺を助けられるの? それと、雷照に取り込まれたもう一人の僕も助けなくちゃ。早くしないと雷照が死んじゃって助けられなくなってしまうよ」
確か、雷照が死ぬ前にもう一人の僕を魂鬼に抜き取ってもらわないと、魂が発散してしまうとかで助けられなくなるはずだ。
「ああ、そこら辺は手を打ってある」
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